泌尿器科の病気について

泌尿器腫瘍
尿路性器感染症・性感染症
尿路感染症 男性性器感染症 性感染症

Ⅰ 泌尿器腫瘍

泌尿器腫瘍について
腎臓、腎う、尿管、膀胱、尿道の「尿路」と精巣、前立腺などの「男性生殖器」に発生した腫瘍をまとめて「泌尿器腫瘍」と呼びます。

1.腎臓がん

腎臓に発生するがんは大きくなって血尿、お腹の痛みや腫れで見つかることもありますが、最近では人間ドックやがん検診などで行われる超音波検査や他の病気で行われたCTなどで偶然発見される患者さんが増えてきています。そのような場合、見つかる腫瘍は小さく、症状もほとんどないことが多いようです。

腎がんの治療は腫瘍の切除が第一選択であり、早期の場合、腎臓を全て摘出する根治的腎摘除術のほか、腎臓の働きを出来るだけ温存するため腎部分切除も行われています。最近では、主に腹腔鏡下手術やロボット支援手術が行われます。

転移部位の摘除が困難な場合や手術後に再発した場合には、主に分子標的薬や免疫療法などの薬物治療が行われています。これらの薬剤は、これまでにない副作用が出現することもあり、専門の医師による治療が必要です。

2.尿路上皮がん

腎う、尿管、膀胱は尿路と呼ばれ、内腔は尿路上皮という粘膜で覆われています。この尿路上皮細胞に発生したがんを尿路上皮がんと呼び、その発生部位により腎うがん、尿管がん、膀胱がんと表現します。

特徴的な症状として痛みがなく目で見て赤い尿(無症候性肉眼的血尿)がありますが、膀胱炎の併発や結石があると頻尿や痛みなどの症状がみられます。

尿路上皮がんは筋層非浸潤性がんと筋層浸潤性がんに分かれます。筋層非浸潤性がんは尿路の内腔に乳頭状に突出することが多く、根は浅く筋肉の層までは達していません。一方、浸潤性がんは根が広く(広基性)深く筋層以上に達しており、転移することもあります。

上部尿路がん(腎う・尿管がん)に対する治療は原則的に腫瘍のある腎臓および尿管を摘除(腎尿管全摘除)しますが、腫瘍が表在性で小さく限局している場合や腎臓が片方しかない症例では、レーザーなどを利用した内視鏡手術も行われています。

表在性の膀胱がんの治療は内視鏡にて切除可能ですが、約40%の患者さんで腫瘍の再発がみられます。そのため、手術後に再発予防のため抗がん剤やBCGなどを膀胱内に注入することもあります。

浸潤性の膀胱がんの治療は、膀胱を摘除し腸管などを利用した尿路の変向術が標準治療となります。

3.前立腺がん

前立腺は男性の精液の一部をつくる臓器であり、正常成人では栗の実ぐらいの大きさで、尿がたまる膀胱の出口のすぐ先にあり、尿道を取り囲むように存在します。前立腺がんはこの前立腺から発生するがんで、壮年期以降に多い高齢者のがんです。

前立腺がんの初期にはほとんど症状がありません。最初に自覚する症状は、尿の勢いが弱い、排尿後に尿が残った感じがする、夜間にトイレに起きるなど排尿に関係する症状が多いのですが、これも良性の病気である前立腺肥大症を合併しているために生じていることが多いようです。さらに進行すれば、血尿や骨に転移して頑固な腰痛などがでてくることがあります。

前立腺がんの診断は、肛門から指を入れて前立腺をさわって調べる直腸診、血液検査による前立腺特異抗原(PSA)測定、経直腸的前立腺超音波検査を行い、さらにがんの疑いがあれば前立腺生検を行います。特にPSA検査は、症状の全くない早期の前立腺がんのスクリーニングとして有用で、採血だけですむので患者さんの負担も少なくてすみます。

前立腺生検はおしりから超音波で位置を確認しながら、直腸または会陰(陰嚢と肛門のあいだのまたの部分)から細い針で前立腺の組織を少し取る検査です。

前立腺がんの治療はがんの広がり(転移の有無など)や悪性度でも変わってきますが、限局性前立腺がんに対する根治療法として手術で前立腺を摘出する根治的前立腺摘除術や放射線治療があります。最近では、腹腔鏡下手術やロボット支援手術で行う低侵襲手術、放射線が密封されたカプセルを前立腺に埋め込む小線源療法や腫瘍の形に適した放射線治療を行う強度変調放射線治療(IMRT)、重粒子線や陽子線を使った粒子線治療など、新しい治療法が行われるようになっています。局所浸潤性前立腺がんや転移を有する前立腺がんに対しては、内分泌(ホルモン)治療を中心に放射線療法、抗がん剤なども併用していきます。

前立腺がんの治療法は多岐にわたり、いずれの場合も病状を十分ご説明し、患者さんの希望、年齢や社会生活の程度なども考慮して治療を選択します。前立腺がんは日本人でも最も増加しているがんですが、ほとんど症状のない早期の前立腺がんは治癒の望める段階でもあります。前立腺がんの早期発見のため、50歳を過ぎたら前立腺がんの検診の意味で一度PSA検査をお受けになることをお勧めします。

4.精巣腫瘍

精巣腫瘍は青壮年層(20~40歳代)に好発するがんであり、陰嚢内容つまり精巣が痛みもなく硬く腫れてきます。精巣腫瘍の診断は触診や超音波検査にて行い、血液検査にて腫瘍マーカーを測定します。

精巣腫瘍の治療は病理学的診断の意味もこめて、鼠頸部(足の付け根)より患側の精巣を摘除します。転移の有無は、CT、骨シンチ等の画像検査にて詳しく調べます。精巣腫瘍は抗がん剤が極めて有効ながんであり、例え転移を有する進行がんでも根治が期待できることもありますが、抗がん剤が効きにくい難治性の場合もあり、様々な工夫をして治療を行っています。

Ⅱ 尿路性器感染症・性感染症

尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)または男性性器に起こった感染症を尿路性器感染症と言います。原因としては細菌、ウイルス、寄生虫などの病原体の侵入によって起こります。その中で最も多いのは、細菌で、特に腸管内に常在している細菌の感染によるものです。

性感染症である尿道炎は、淋菌やクラミジアなどが原因になります。性感染症の中でも、特に近年、梅毒が全国的に増加傾向にあり、注意が必要です。

1.尿路感染症

尿路感染症では、細菌は尿の出口(外尿道口)から侵入し、尿路を上って行き、膀胱や腎臓に感染症を起こします。尿路感染症は最も頻度の高い感染症の一つです。性的活動期である20~40歳代の女性に多い病気です。しかし、お年寄りになると、感染症を起こしやすくなる病気を持っている方が増加しますので、男女を問わず、尿路感染症を起こす人が増加します。この場合、感染症を起こしやすくなる病気を治さないと尿路感染症を繰り返したり、治らないことが多く、泌尿器科での精密検査や適切な治療が必要となります。

1)急性膀胱炎

膀胱に細菌が入り、炎症を起こした状態です。トイレに行きたい感じが強く抑えられない(尿意切迫感)、トイレの回数が増える(頻尿)、尿をする時に下腹部や尿道が痛む(排尿時痛)、尿をした後でも残っている感じがする(残尿感)、目で見てみ分かる程度の赤い尿が出る(血尿)または尿がにごっている(尿混濁)といった症状を認めます。

尿検査で白血球の数を確認したり、菌がいるのか、どのような菌がいるのかなどの検査を行います。基礎疾患のない場合は、短期間(3日~7日)の抗菌薬内服で治癒することがほとんどです。治りが悪い場合や短期間に何回も繰り返す場合には、膀胱内に結石や異物、腫瘍、多量の残尿がある場合がありますので、泌尿器科での検査が必要です。

高い熱が出る、腰背部痛がある、悪寒がするといった症状が見られる場合は、より重篤な「腎盂腎炎」を起こしている可能性があるので、泌尿器科での精密検査や治療が必要です。

2)急性腎盂腎炎

膀胱炎に引き続いて、発熱や腰背部痛などが現れる病気です。腎臓に細菌感染が起こり、全身にも感染が広がることがあります。多くの場合、入院して治療することになります。

治りにくかったり、繰り返すような場合は、泌尿器科での精密検査が必要です。

2.男性性器感染症

男性の性器には、前立腺、精巣(睾丸)、精巣上体(副睾丸)、陰茎などがあり、これらの臓器にも感染症が起こります。

1)前立腺炎

男性の場合、膀胱の出口の部分に、尿道を取り囲むように前立腺があります。前立腺は、年をとると肥大症やがん等になることがあります。細菌やその他の病原体に感染すると、前立腺炎を起こすこともあります。発熱や会陰部(陰嚢の付け根と肛門との間の部分)の痛み、排尿時の痛みなどを起こす「急性細菌性前立腺炎」では、入院が必要となることも少なくありません。

細菌の感染がはっきりしない非細菌性前立腺炎は、「慢性前立腺炎」または「慢性骨盤痛症候群」とも呼ばれ、前立腺の部分やその周囲の痛みや不快感などが主な症状です。

慢性前立腺炎の多くは、症状が軽いこともあり、外来で治療されますが、治療が長引いたり、すっきり治りにくいことがあります。

2)精巣上体(副睾丸)炎

精巣(睾丸)の横にくっついている半月状の臓器が精巣上体(副睾丸)です。

細菌に感染すると、痛みを伴って陰嚢部が腫れ、発熱もみられます。抗菌薬で治療します。

感染がひどい精巣上体炎の場合は、入院して治療することもあります。

3)亀頭包皮炎

包茎の場合、亀頭と包皮との間に垢が貯まり、細菌の感染症を起こしやすくなります。

子供に多い病気です。塗り薬で治療しますが、ひどい場合は、抗菌薬を飲んでいただくこともあります。

3.性感染症

性行為でうつる病気で、以前は性病と呼ばれていました。泌尿器科では、主に尿道炎、尖圭コンジローマ、性器ヘルペス、梅毒という病気を診療します。

1)尿道炎

排尿時の痛みと尿道からの分泌物が特徴です。淋菌による尿道炎は、症状が強く、感染機会から2~7日で症状が出ます。淋菌は耐性菌が増えていますので、飲み薬では治療が難しくなっており、主に注射薬で治療します。

クラミジアによる尿道炎は、一般に淋菌よりも症状が軽微であり、感染機会から約1~3週間後に症状が出ます。淋菌以外の尿道炎は、主に飲み薬で治療をしますが、原因によって治療に使う薬が違いますので、泌尿器科でよく検査をしてもらって下さい。

2)尖圭コンジローマ

ヒトパピローマウイルスというウイルスで起こる病気で、性器とその周囲に特有なイボができます。治療は、切除したり、特殊な器具や液体で焼いたり、塗り薬で治療します。

3)性器ヘルペス

単純ヘルペスウイルスというウイルスで起こる病気で、性器やその周囲に小さな水疱が多発したり、痛みを伴う潰瘍ができます。治療には、抗ウイルス薬を飲んだり、塗り薬を塗ったりします。

4)梅毒

近年、梅毒が全国的に増加傾向にあり、注意が必要です。梅毒トレポネーマという細菌で起こる病気で、感染から約3週間で性器や陰部に硬いしこりができた後、痛みのない潰瘍ができます(第1期梅毒)。

これらの症状は放っておくと、自然に消えてしまうことがありますが、治ったわけではありません。治療をしないで3か月以上経過すると、手のひら、足の裏、体全体にピンク色のバラ疹とよばれる発疹が出ることがあります(第2期梅毒)。

さらに治療をしないで数年が経過すると、皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍(ゴム腫)ができることがあります(第3期梅毒)。さらに、心臓や血管、脳などの臓器に病変が生じ、場合によっては死に至ることもあります。

梅毒を診断するには、血液検査を行います(梅毒血清反応検査と呼ばれます)。梅毒は主に内服薬で治療します。

Ⅲ 尿路結石症

尿の成分が固まって石のようになったものを尿路結石と言います。結石の存在する場所によって、上部尿路結石症(腎結石、尿管結石)、下部尿路結石症(膀胱結石、尿道結石)に分けられ、我が国では約95%が上部尿路結石症です。上部尿路結石症の多くはカルシウム含有結石であり、原因については依然不明の点も多く、再発予防にも明確な方法がないのが現状です。

下部尿路結石症の原因としては、上部尿路から下降した結石が排石できずに膀胱内で成長したものや、寝たきりなどで尿道に留置されたカテーテルが核となって結石が形成されることが多いようです。結石成分も尿路感染に伴う感染結石や尿酸結石が多い傾向にあります。

上部尿路結石症の腎結石の場合、背中の鈍痛や血尿(顕微鏡的血尿)が主な症状である事が多く、無症状の事もあります。検診の際、超音波検査で偶然発見されるケースも多く認められます。結石が尿管に下降して尿管結石となった場合には、突然の背中や側腹部の激痛や肉眼的血尿などの症状が認められます。結石が膀胱近くまで下降してくると、側腹部痛や下腹部痛と共に尿意切迫感、残尿感といった症状を伴う様になります。

下部尿路結石症においては、膀胱結石では排尿時痛みや頻尿などと肉眼的血尿が主な症状です。時に結石が尿道に嵌頓して尿道結石となる場合もあります。

尿検査で血尿(肉眼的血尿、顕微鏡的血尿)や尿路感染症の有無を調べます。尿路結石症の診断において必須の検査ですが、全く異常所見を認めない場合もあります。腎臓から膀胱まで含めた腹部単純(KUB)を撮影し、結石の存在部位、大きさなどを確認します。単純撮影だけではっきりしない場合や、レントゲンに映らない結石(尿酸結石など)の場合、造影剤を用いた尿路造影検査をする事があります。超音波(エコー)検査はレントゲンに映らない結石や腎臓が尿で腫れて水腎症になっていないかなどの状態を見るのに適しています。非侵襲的検査であり、尿路結石症の診断において必須の検査です。最近では腹部をくまなく検査できるマルチスライスCTが簡単に撮影できるようになり、尿路結石症の診断において重要な検査となっています。

治療法には、薬物で治療する保存的治療と手術で治療する外科的治療があります。5mm未満の結石は自然排石することが多く、5-10mmの結石の自然排石約半分と言われています。よって5mm未満の小さい結石であれば、結石が排尿とともに排出する様に、水分を多く摂取して頂きます。排石促進剤(尿管の蠕動を促して排石を助ける薬)などを使用することがあります。痛みに対する治療薬は、一般に非ステロイド系消炎鎮痛剤を使用します。

結石が嵌頓し自然排石が困難と判断される場合や激しい痛みが続く場合、さらには感染症を併発している場合などには、結石の部位やサイズに関わらず外科的治療が必要になります。

10mm以上の結石は積極的治療の適応とされます。積極的治療には以下のようなもとがあります。

  1. 体外衝撃波結石破砕術(ESWL):衝撃波発生装置から発生される衝撃波で体外から結石を破砕し、小さな破砕片として結石の排出を促す治療です。結石の部位によっては破砕が困難であったり、結石の破砕が不十分で自排石しないケースもあります。
  2. 経尿道的尿管結石砕石術(TUL):尿管鏡という細い内視鏡を尿道から挿入し、尿管内の結石を直接確認してレーザーなどを使用して砕石します。麻酔下に行う必要があり、一般に短期間の入院が必要となります。
  3. 経皮的腎砕石術(PNL):腎臓に直接背中から管を通し、専用の内視鏡と砕石装置(レーザーや圧縮空気破石装置など)を用いて砕石します。麻酔下に行うために入院治療が必要となります。腎臓の大きな結石(サンゴ状結石)などで行われることが多く、TULと組み合わせて行うこともあります。
  4. 経皮経尿道的結石砕石術(TAP:TUL Assisted PNL):TULを併用してPNLを同時に行う治療法です。TULによる細かな操作とPNLによる結石の除去効率が最大のメリットです。あらゆる位置と大きさの結石に対応できます。近年は治療(結石除去)効率の良さから多くの施設で導入され始めています。ただし、同時に2つの手術を行うために複数の内視鏡を操作する必要があり、複数の術者が必要であるなどの問題があります。
  5. 開腹手術:約20年以上前では尿路結石に対する外科的治療の一つとして行われていましたが、現在は内視鏡の進歩などによりほとんど行われません。

現在我が国の尿路結石症の殆どはカルシウム含有結石であり、明確な再発予防策が無いのが現状です。水分の十分な摂取が重要です。ただ一部には再発予防が可能な結石(尿酸結石など)もあり、自排した結石を採取できた際には、必ず結石分析をされる事をお勧めします。

Ⅳ 尿失禁

尿がもれてしまうことを尿失禁と言います。尿失禁には以下の種類があり病状が異なります。

  • 切迫性尿失禁 我慢できないような強い尿意があり、それが我慢できなかった結果漏れてしまう
  • 腹圧性尿失禁 咳払い、くしゃみの時や重い荷物を持った時などの腹圧がかかったときにもれてしまう
  • 溢流性尿失禁 排尿しにくい一方で常に尿がもれてしまう
  • 機能性尿失禁 手足が不自由、認知症があるなどで排尿の準備が間に合わなかった結果もれてしまう

どのような時に尿がもれるのか、いつから症状があるのかなどが重要です。検尿、尿の勢いの検査、超音波検査、内診など必要な検査を行います。

以下のように尿失禁の種類によって治療法が異なります。

  • 切迫性尿失禁 飲み薬(抗コリン薬、β3アドレナリン受容体作動薬)でコントロールします。前立腺肥大症が基礎にある方は、肥大症の治療が必要です。
  • 腹圧性尿失禁 骨盤底の筋肉を鍛える運動の指導、または手術をします。
  • 溢流性尿失禁 原因の疾患を治療します。
  • 機能性尿失禁 排尿をスムーズに行えるような環境整備をすすめます。

Ⅴ 過活動膀胱

急にトイレに行きたくなり我慢が難しい(尿意切迫感)、トイレの回数が多い(頻尿)、急にトイレに行きたくなり我慢できずに漏らす(切迫性尿失禁)」が代表的な症状です。

健康な人は400~500mlの尿をためることができますが、過活動膀胱では、それほど尿がたまっていなくても、膀胱が収縮し尿意をもよおし我慢できなくなります。原因として脳梗塞などの脳血管疾患、脊髄疾患、末梢神経障害、前立腺肥大症、加齢、骨盤底筋の脆弱化が考えられています。

過活動膀胱の検査は、まず症状の問診が中心です。代表的な症状である尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁の程度についてお尋ねします。

また、どのような排尿状態であるかを確認するため、排尿の記録(排尿時刻や1回排尿量など)をつけてもらうこともあります。さらに、過活動膀胱と同じような症状を来たすことのある別の病気を見分けるため、尿検査や超音波検査を必要に応じて行います。

治療は普段の生活習慣によって排尿症状が悪化していると判断される場合は生活習慣の改善をお願いすることがあります。さらに薬物療法が必要の場合は内服薬が中心です。膀胱の神経に働きかけ収縮を抑える抗コリン薬、β3アドレナリン受容体作動薬が主な内服薬とされます。男性の前立腺肥大症に合併した過活動膀胱の場合は前立腺肥大症に対する治療(内服)が必要となります。

Ⅵ 前立腺肥大症

前立腺は男性の膀胱の下に存在し大きさはくるみ大の臓器で精液の一部を分泌している臓器です。前立腺が大きく腫大すれば尿道が圧迫され排尿障害が出現します。

60歳以上の男性の60%に前立腺肥大症は存在し40%以上は自覚症状を呈すると言われています。

第1期から第3期までの症状があります。

【第1病期(膀胱刺激期)】
夜間にトイレに行く回数が多くなる、尿の勢いがない、尿がすぐ出ない、少ししか出ない、時間がかかる(排尿障害)などの症状が出てきます。
【第2病期(残尿発生期)】
排尿した後もすっきりとせず残っているような感じがする(残尿感)などの症状が出てきます。
【第3病期(慢性尿閉期)】
昼夜を問わずトイレに行く回数が増えて(頻尿)、排尿にかかる時間が長くなり、一回の排尿に数分かかるようになります。時には尿が全く出なくなってしまうこともあります(尿閉)。
診断に必要な検査な
  • 問診:症状の重症度を客観的に判定する表として国際前立腺症状スコア(IPSS)が用いられます。
  • PSA(前立腺がんの腫瘍マーカー)採血:前立腺が大きくなる病気に肥大症とがんがあります。鑑別のためPSA採血します。PSA値が上昇している場合、前立腺がんの鑑別が必要となります。
  • 超音波検査(エコー):経腹的または経直腸的にエコーにて前立腺体積を計測します。
  • 直腸診(前立腺触診):肛門より指を挿入し前立腺を触診します。前立腺の大きさ形態を知る上でも重要な検査です。またがんとの鑑別に有用な検査です。
  • 尿流量測定:尿が溜まった状態で器械に向かってオシッコしてもらい尿の勢いを測定します。終了したらエコーにて残尿を測定します。
治療には薬物療法または外科的療法があります。
【薬物療法】
  • α-1受容体遮断薬:排尿時は膀胱頸部の開大を助け、尿勢の勢いが増し、蓄尿時は膀胱の過活動を抑制し、日中および夜間の頻尿を軽減させます。副作用としてめまい・ふらつき・立ちくらみなどの低血圧に伴う症状が生じる場合があります。
  • PDE-5阻害薬(タダラフィル):尿道や前立腺の平滑筋細胞においてホスホジエステラーゼ5(PDE5)を阻害することにより、局所のcGMPの分解を阻害し平滑筋を弛緩させ、下部尿路組織における血流及び酸素供給が増加し、前立腺肥大症に伴う排尿障害の症状が緩和されます。
  • 5α還元酵素阻害剤(デュタステリド):前立腺を縮小させ、腺腫による閉塞を改善させます。副作用として肝機能障害、性機能障害や女性化乳房などがあります。
【外科的治療】
薬物療法で改善が得られない場合、尿閉状態、膀胱結石を併発する場合などに適応となります。いずれの手術も主に腰椎麻酔(半身麻酔)で行います。
代表的な治療法として下記治療法が挙げられます。
  • 経尿道的前立腺切除術(TUR-P):本邦で最も多く行われている術式です。内視鏡を尿道より挿入し先端の電気メスで肥大した前立腺を尿道内から切除します。
  • ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP):内視鏡を尿道より挿入し、ホルミウムレーザーという種類のレーザー光を照射し、肥大した内腺(腺腫)を外腺から切り離します(核出)。核出され膀胱内に移動した腺腫を別の機器で細切・吸引して摘出します。近年レーザーの普及により導入施設が増えてきています。
  • 光選択的前立腺レーザー蒸散術(PVP):内視鏡を尿道より挿入し高出力レーザー光を照射し、肥大した前立腺組織を蒸散させて、尿路の閉塞を取り除く治療法です。組織の蒸散に伴い表面に凝固層が形成されるため、これまでの内視鏡手術とは異なり、手術中ほとんど出血せずに前立腺による尿道の閉塞をとることが可能です。比較的大きな前立腺肥大にも対応可能です。TUR-Pより低侵襲で合併症も少ない手術法です。近年レーザーの普及により導入施設が増えてきています。

Ⅶ 勃起障害(ED)

EDとは英語のErectile Dysfunction(勃起不全)の頭文字をとったものです。国際的な定義は、“性交時に十分な勃起が得られない、または十分な勃起が維持できないために、満足な性交が行えない状態”とされています。

勃起が起こるためには、心理的な興奮が正常に起こることとペニスを支配する神経と血管(海綿体も含む)が正常であることが前提となります。従って、心理的な要因であるストレス、不安、うつ病などによって発生しますし、神経の障害をもたらす脊髄損傷や神経の病気(多発性硬化症など)や骨盤内の臓器(膀胱、前立腺、直腸)の手術や放射線治療、糖尿病などによっても発生しますし、血管の病気である高血圧や糖尿病、心臓病の方にも発生します。また、精神科の薬や高血圧の薬などの副作用によっても起こることがあります。

診断はまず初めにIIEF5と呼ばれる問診表に記入していただきます。点数が21点以下であればEDの疑いがあります。後は、詳しい問診と、血管と神経に重点をおいた全身的な診察が必要です。必要な場合には採血もいたします。ペニスの血流を計ったりするような特殊な検査は一部の専門的な施設でのみ行っています。

EDの危険因子で排除可能なものがあれば排除し(例:禁煙など)、その後に、薬物療法を考慮します。薬物療法も含めて、すべての治療について保険が適応されていませんので、すべて自費となります。

バイアグラ、レビトラ、シアリスは3剤ともホスホジエステラーゼ5阻害剤に分類されるお薬です。その作用は、勃起を起こす物質である一酸化窒素が細胞内でサイクリックGMPという物質を作ります。そのサイクリックGMPの働きでスポンジ状の海綿体の筋肉が弛緩し血液が充満し、勃起が起こるのですが、このサイクリックGMPを分解するホスホジエステラーゼ5阻害剤の作用を邪魔するのです。それによって勃起を助けます。

硝酸剤と呼ばれる一連の薬剤(飲み薬、貼付剤、舌下錠、注射)とこの種類の薬が体内で同時に存在すると、血圧が危険なレベルにまで下がりますので併用禁忌(決して併用してはいけない)になっています。

Ⅷ 陰嚢水腫

精巣のまわりの精巣固有漿膜と呼ばれる袋状の部分に水(体液)がたまって陰嚢がはれているように見える病気です。

陰嚢から針を刺してたっまった液体をぬくことで一時的に小さくなりますが、再発を繰り返すため、根治には手術(陰嚢水瘤根治術)を行います。